民間図書館「晴耕雨読」

人口約17万人の茨城県日立市。毎日1万人が利用する駅から徒歩2分という距離に、民間図書館「晴耕雨読」はあります。「晴耕雨読」は1階にあり、シェアキッチンも設置されています。2階へ上がるとシェアオフィス、コワーキングスペースになっています。

ここを運営しているのは、CANVAS合同会社の代表社員の加藤雅史さんです。実は、加藤さんは建築の専門家。「晴耕雨読」も加藤さんが自らデザインし、建築を手がけました。加藤さんの思いと建築技術が重なり合い、とても落ち着けるおしゃれな空間が創り出されています。

「イロイロな人のイロイロな色に会いに来られるよ」

一箱本棚は20棚が埋まっています。置かれている本は、建築系、鉱石、教育系など多彩な分野です。音楽の先生による音楽系の本が並んだ棚。趣味であちこちの山に登っている方が登山に関わる本を置いた棚。子どもの不登校に向き合う親御さんの棚。一つひとつの本棚にそれぞれのオーナーさんの物語があります。

ある50代のオーナーさんが「ぜひ若い人にも読んでほしい」と、自叙伝とともに漫画「あしたのジョー」を全巻置いたことがありました。すると、何名かの大学生が全巻制覇したのです。その後、世代を越えた楽しい交流が生まれました。

放課後、高校生が無料スペースを利用したり、受験勉強に2階のコワーキングスペースを活用したりするのも日常の風景です。

「場のキーマンは『人』だと思っています。人と人の共感がつながって広がっていく。この場所に、いろいろな人のいろいろな色に会いに来られるよ、と伝えたいです。」

「すべての人に自己実現を」

「すべての人に自己実現を」というテーマで物事を考えている加藤さん。

「世の中にはいろいろな人がいます。コミュニケーションが上手な人ばかりではないと思うんです。この図書館というシステムは、口下手な人でも自分の世界観を表現できる素晴らしい仕組みだと思うんですよね。」

一つひとつの本棚に表現された世界観。しゃべるだけが表現ではなく、黙っていてもその存在そのものに、それだけで充分な価値があるということ。一つひとつの本棚の存在は、その人がそのままそこにいるだけで世界に一人しかいない貴重な存在である、ということをも表現しています。

話す内容やコミュニケーションの如何に関わらず、その人のそのままの存在が認められたら良いという思いが「晴耕雨読」には詰まっています。

「何かの一歩目」となる場所に

「晴耕雨読」という名前には、悠々自適に人生を生きていきたいという願いがこめられています。ここはすでに、音楽の流れるおしゃれで落ち着ける空間が創り出されてはいますが、究極の公共は公園だと考えている加藤さん。本当はもっとオープンで、いつでも開かれている敷居のない場所を目指しているそうです。

「お金を持っているとか、仕事の肩書がどうとかではなくて、自分が落ち着いて満足しているかどうかが大事だと思っています。無理やりしゃべらなくても、ここに居るだけで心が落ち着いて居心地がよい場所にしたいです。そして、何か、人生のきっかけや、誰かの何かの一歩目となる場所になってほしいという思いがあります。本を読むだけでなく、勉強したり書いたり、キッチンで何か作ったり。いろいろな人がいろいろなことをできる、『自己実現の一歩目』となる場所になってほしいですね。」

自分の心が満たされる場所。人生にとって大事な空間になっています。

民間図書館 晴耕雨読

〒316-0003 茨城県日立市多賀町1丁目12-24 鈴木第三ビル
公式ウェブサイト https://seikouudocu.com/

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