サンカク公園 サンカクbooks

静岡県の中部、大井川と共に歴史を刻んできた島田市。その島田の駅北口を出るとすぐ見える駅前緑地「サンカク公園」にあるのが「サンカクbooks」です。

もともとこの緑地は区画整理で移転したお寺の境内だったところですが、ちょうど二等辺三角形の形になっていることから「サンカク公園」と呼ばれてきました。

今も残る楠・槇・ヤマモミジが大きな枝葉を広げて緑陰を作ってくれる、気持ちの良い場所です。平日も休日も、人々が思い思いに憩い、賑わっています。

しかし、この場所は5年ほど前まではまるでひとけがありませんでした。どのようにしてこのような変化を引き起こしたのでしょうか。地域デザインコーディネーターとして「サンカクbooks」の運営をなさっている菱谷真美子さんにお話を伺いました。

スタートはシェアキッチン

「サンカクbooks」は2021年4月から始めました。もともとは「サンカク公園」をなんとか活用し、みんなが参画できるところにしたいと思って行政と話し合いを重ねながら2019年秋に「サンカクキッチン」というシェアキッチンをスタートさせたのが始まりです。

現在、シェアキッチンには2軒のコーヒー屋さんが日替わりで入る傍ら、その建物内部の壁面が「サンカクbooks」と名付けられた「一箱本棚」となっています。

「『みんなが参画するサンカク公園』になればと願って名付けたので、最初からシェアキッチンの壁面は開放したいと考えていました。そこで、初めの1年間は企業のPRブースとして企業さんに使ってもらいました。

しかし、今は『広告っぽい広告』にお金を出さなくなっている時代です。うまくまわっていない感じがしました。企業さんにもお客さんにも喜ばれないのなら変化を起こそう!と、以前からやってみたいと思っていた民間図書館として活用してみることに決めました。

早速、一箱本棚オーナーを募集したところ、希望者が続出し、即日、全棚が埋まったのです。今に至るまでずっとキャンセル待ちが続いています。オーナーになってくださる方は、コーヒー屋さんの常連客やインスタをいつも見てくださっている方が多いですね。」

自走できるビジネスを

菱谷さんは、まちづくりについてもビジネスとして成り立たせることが大切だと考えています。

「まちづくりも事業としての企画書を出す、というくらいのことが必要だと考えています。そういう意味をこめて、私は『地域デザインコーディネーター』という肩書を名乗っています。プロジェクトがまとまるようにコーディネートしてデザインしていくということを、私は仕事という認識で取り組んでいます。ボランティアではなく自走できるビジネスになるようにと考えて仕事をしています。」

「プライスレス」な場所

「事業としてとらえているので、マネタイズができているかという点は大切にしています。先日、お客さんから『サンカクbooksはプライスレスですから』という、うれしい言葉をもらいました。図書館はいろいろな人とつながる場として、金銭的にはマイナスにならない程度でまわしながら、その他、つながりから派生していくものが本当の価値だと考えています。

つまり、人と人との交流が何よりの価値です。この場所でスタートした人の交流がさらなるつながりや可能性を広げていく。そして、どんどんこの場所の価値をあげていく。ですから、この場所の価値はプライスレスです。お金よりおもしろいですね。」

金銭的なことだけではない収益化。この場所でのつながりが、さらなる交流を生み、可能性が広がる……その、人と人との交流こそが、金銭には代えられない価値を生み出しています。

「先日、本棚オーナーのカメラマンさんの企画で『公園写真展と撮影会』をしました。え?写真展って公園でできるの?と思った人が多いと思いますが、やってみるとできるんですよね(笑)。

撮影会も『同じ場所でひとつの時間を過ごしたことが写真になり、良い記念になりました。ありがとう』『思いがけず久しぶりにみんながそろった家族写真を撮ってもらえてうれしかったです』など、大好評でした。カメラマンさんも『プロの写真展としては失敗かもしれないが、これができただけで自分にとっては大成功だと思う。

クリエーターとして、こういうやり方もあるということを見せられた。他のクリエーターさんの、何か足掛かりになれたら。』とおっしゃっています。彼にとってのマネタイズの場所になれたことがうれしいし、どんどんプライスレスな価値ある場所になっていけることがまたうれしいですね。次は4人のカメラマンさんによる共同写真展の企画が生まれています。」

人が集まり、つながるインフラ

「いまやカフェは、一つのインフラだと考えています。まちの中に『なくてはならないもの』です。今の時代は、集まりましょう!と言っても人は来ません。それよりも『コーヒーを買う』というような普通の日常、普通の会話の中に発展性があると思っています。

コーヒーを飲みながら、今度こういうことがしてみたいな、それならこういうことで力を貸せるよ、などという会話が引き起こされて企画につながる。もちろん、したくない人は何もしなくていいし、逆に、したい人はしてもいい、どちらの自由もある。カフェは、人の集まりや、人のつながりを引き出すインフラととらえています。」

「先日からは新しい試みとして、『無人販売所』も始めてみたんです。誰でもなんでも持ってきていいよ、という販売所です。すると、エシカルな取り組みをされているボールペン作家の方が、なんと、自分で手作りした干し柿を出品されて、その意外な展開に驚くということもありました。予想をこえたことが起こるのも、この場所の魅力ですね。」

キュレーションとコレクティブ

「ただ、何でもどうぞというのではなく『ふるいにかける』、つまりキュレーションも大事だと考えています。誤解されることもあるのですが、そのタイミングで必要ではなかったり、その分野に向いていなかったりという場合はあると思うんです。同じ方向に向かってそのタイミングで進めていく場合には、何が最適かを見極めることは必要だと思っています。」

「コレクティブも大事だと考えています。プロジェクトを立ち上げるというのは、たとえば、家を建てるのに似ていると思うんです。図面を引く人、大工さん、塗装屋さん、内装を作る人など、完成にむかって進んでいくためにはいろいろな人と『チーム』を作っていくことが大事です。いかに組織化し、チームとして運営していくか。そこがまたおもしろいところです。」

これからは

「誰かの何かを全力で応援していくということをしていきたいです。主人公はみなさん。その裏方になれたらと思っています。ただそれは、その人がそのことを通してどんな社会にしたいか、その人が持っている世界観に自分が共感できるかどうかということが条件です。今は、音楽に関わっている方々と一緒にイベントを企画したり、一箱本棚オーナーのお茶農家の方とコレボレーションしたりすることを考えています。」

「サンカクbooks」は、人と人とのつながりが礎となって、何かが生まれる可能性を秘めたプライスレスな場所になっています。

サンカク公園 サンカクbooks

 〒427-0029 静岡県島田市日之出町5−1

公式Facebook  https://www.facebook.com/sankakukouenn/

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