あひる図書館

富士山の南麓、伊豆方面や富士・箱根方面への起点となる静岡県東部の交通の要所にあたる三島市は人口約10万人の都市です。新幹線の停車駅にもなっている三島駅の南口から、徒歩7~8分ほどの場所にあるのが「あひる図書館」です。2021年11月1日に誕生しました。

「あひる図書館」は飲食店の2階にあります。隣接する市立公園は約7万平方メートルもの広さを誇り、森林遊歩道や庭園などがある自然豊かな場所。

この公園が借景となって、「あひる図書館」の窓からは大きな池や樹木を見渡せます。四季折々の自然を感じる、開放的な空間になっています。「あひる図書館」は飲食物の持ち込みもOK。1階のお店で購入することもできます。ついついのんびりと、長居したくなる場所です。

きっかけ

この「あひる図書館」の運営に携わっている団体「ママとね」の徳丸まゆみさんにお話をうかがいました。

「『ママとね』というのは子育て情報サイトを運営している団体です。子育て中のお母さんたちがボランティアでサイト運営に携わっていて、2014年に始めて今年で8年目です。きっかけは、代表が静岡東部に転入してきて経験した孤独育児から。

静岡県東部は市町の生活圏が重なっているので、自分の市町のサイトのみでは情報が少なく、欲しい情報を得られず迷子になっていました。情報をもっと身近にという思いから静岡東部で活動している支援団体さんなどを現役のママ達とつなぐ橋渡しのようなサイトが誕生しました。それが『ママとね』です。サイトでは各市町の子育てイベントや、支援団体の取組などをとりまとめて紹介しています。子育て中の方々が孤独感にさいなまれないように支えたいと思って運営しています。」

しかし、コロナ禍で、イベントの中止や支援センターの一時閉鎖が相次ぎました。

「実は『ママとね』を運営していく中で、オフライン上でも居場所づくりを進めていきたいと前から考えてはいましたが、コロナ禍を経てますます思いは強くなりました。子育てというのは、お母さんだけが担うのは限界があります。子育てをもっと幅広い年代の方達の中で出来たら一番良い。

けれども町の皆さんにもっと関わってもらうにはどうしたらよいだろうか、と考えていました。それらをすべて解決してくれたのが、この『あひる図書館』です。もともと代表も私も本が好きだったため、『ママとね』サイトにもおすすめの絵本を紹介していました。1冊の本を介して、老若男女が分け隔てなくつながることができる私設図書館、焼津の『みんなの図書館さんかく』『一箱本棚オーナー制度』を知ったとき、これだ!と思いました。

今までもサイトへの協賛という形で町の子育てを応援してくださる企業さんはたくさんあったのですが、単純にお金を出す子育て支援だとそこで完結してしまいます。そうではなく、本棚を借り、本を並べるという行為が子育ての支援になるだけでなく、まちの人とのつながりを生み出すことになる。そこに、とても温かいものを感じました。」

あらゆる世代の「みなさん」が主人公

「ママとね」は運営に携わりますが、主人公はここに参画する「みなさん」。「あひる図書館」では、本を通して、子育て家庭を含む、地域のあらゆる世代が繫がって情報を共有する場づくりを目指します。

「一箱本棚オーナーを募集したところ、すぐにいっぱいに。『ママとね』の活動に関わっていた方ももちろんですが、全く初めての町の方も『何やるの?おもしろそうだね』と一箱本棚オーナーになってくれました。現在、約60棚。すべて埋まっています。」

こちらの一箱本棚の形は、32cm×32cm×35cmの正方形。奥行きがあるおかげで本を置いても箱の前方にスペースが出来ます。そのスペースを利用し、ディスプレイを思い思いに楽しんでいるオーナーさんもいます。謎解き図書館という手作りのなぞときや手作り絵本を置く方など、60箱60人の個性が詰まった棚。「あひる図書館」のサイトでは、棚の写真をつけて一人ひとりの棚を紹介しています。

「あひる図書館」はほぼ毎日、10時半~17時で開館しています。お店番さんも個性豊かで、公務員の方から町の呉服屋さん、イラストレーターの方など。

「本棚オーナーさんをはじめ、『ママとね』スタッフなど、いろいろな人に協力してもらって今の形を作り上げています。その他、ハンドメイド商品を制作している方に出店OKでお店番をしてもらうこともあります。各自が希望の日時を入力したら自動的にシフトを作ってくれるというアプリを活用しています。来館される折は、開館カレンダーを確認してからお越しくださいね。」

掛け合わせると生まれる新しさ

「オーナーさんは、本当に多才な方ばかり。仕事以外の趣味や資格など、ひとつのことだけでなくいろいろな面を持っていらっしゃって、日々、お話する度に『こんな方だったのですか!』とびっくりすることばかりです。」

「先日は、和菓子の『練り切り』を趣味でなさっている方と絵本専門士の方、このおふたりによる『絵本と練り切りの会』というイベントが開催されましました。

『和菓子を広い世代にも味わっていただきたい』という思いと『大人にも絵本を』という思いが掛け合わされて、新しい組み合わせが生まれました。新しいコラボレーションをすることで、かつて経験したことのない年齢層の方がいらっしゃってうれしいイベントになりました。

これからもオーナーさん同士の関わり合いを増やし、いろいろなイベント企画のフォローをできたらいいなと考えています。人と人とが出会ったらどんな新しいこと、楽しいことが起こるのか、わくわくしています。」

いろいろな人が、自分の「良い」を見つけられる場所に

「ここに来たらほっとできるから来たとか、誰かとしゃべりたいなあと思って来たとか。どんな本や人に出会えるだろうかと知的好奇心に満ちてわくわくして来たとか。一人ひとりにとって『あひる図書館』に求めるものは違うと思います。しかし、どんな人にとっても、その人自身の『良い』をみつけられる場所であってほしいなと思っています。」

本や会話を通じて、幅広い年齢層の人がゆるく、そして楽しくつながっていく「あひる図書館」という場所。自分の「良い」がきっとみつかるはずです。

あひる図書館

〒411-0857 静岡県三島市芝本町9-12 2F 四季酒彩 風土
公式ウェブサイト https://mamatone.net/ahiru-library/?fbclid=IwAR2A4Dn4Lt5DD6b5EZ9pqkDuXKeUlSQyt5hN77XoM9emHklltgOrusxlf-E
公式インスタグラム https://www.instagram.com/ahiru_library/

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